上村さんの悪性リンパ腫体験記 ― 余命1ヶ月からの今 ― #01 —
2026.05.14
「当院でも前例がありません」と言われた日
〜ALCLという稀な悪性リンパ腫との再戦〜
4年前、私は**ALCL(未分化大細胞リンパ腫)**という悪性リンパ腫を発症しました。
当時、医師から提示された治療はCHOP療法という抗がん剤治療でした。
「この治療が効かなければ、次は難しいかもしれません。」
そんな説明を受けたことを今でも覚えています。
正直、不安でした。
ですが、その時の私は運よく治療がよく効き、6回の抗がん剤治療を経て寛解することができました。
本当に奇跡のようでした。
そして私は、再び日常を取り戻しました。
仕事に戻り、いつものように忙しく働き、普通の毎日が戻ってきました。
ところが4年後。
まさか再び、この病気と向き合うことになるとは思ってもいませんでした。
しかも今回は、さらに厳しい状況でした。
私のALCLは、非常に稀なケースとして中枢神経(脳)に病変が及んでいたのです。
主治医から言われた言葉が忘れられません。
「当院でも前例がありません。」
標準治療がない。
つまり、決まった正解がないということでした。
先生方は何度もカンファレンスを開き、私にとって最善と思われる治療法を検討してくださいました。
その結果、まず選ばれたのが大量メソトレキセート療法でした。
脳の病変に対応するための抗がん剤治療です。
1回目の治療後、MRIを見て驚きました。
あれほど大きかった脳の腫瘍が、約1cm小さくなっていたのです。
「効いている!」
本当にうれしかった。
希望が見えた気がしました。
ところが、現実はそんなに甘くありませんでした。
2回目。
3回目。
変化が止まったのです。
医師からは静かにこう告げられました。
「変化がないということは、実質的には後退しているのと同じです。」
言葉の意味はすぐに理解できました。
効かなくなった。
そういうことでした。
そこで次に提示されたのが、アドセトリスという抗がん剤でした。
初めて聞く名前でした。
正直、漫画に出てきそうな名前だな…と一瞬思いましたが、先生の表情は真剣でした。
私に残された数少ない選択肢の一つ。
そんな空気を感じました。
私はその日、Tシャツに短パン、財布だけという軽い格好で病院へ行っていました。
いつもの診察のつもりでした。
ですが、そのまま入院となりました。
それも、長期入院。
まさか、その日から人生が大きく変わるとは思ってもいませんでした。
しかも時はコロナ禍。
家族にも会えない。
社員にも会えない。
お客様にも会えない。
病気と闘うことよりも、孤独と向き合うことの方がつらかったかもしれません。
それでも、私はまだどこかで
「何とかなる」
と思っていました。
ですが、その時はまだ、本当の試練の始まりだったのです。
