生着――白血球が戻ってきた日 #24
2026.09.29

移植が終わってから、私が毎日気にしていたもの。それは、白血球の数値でした。
前処置で大量の抗がん剤を5日間連続で入れ、血液を作る力を極端に落としました。
その後、自分自身の造血幹細胞を身体に戻した。
でも、戻した瞬間に血液が増えるわけではありません。
そこからしばらくは、
「本当にこの幹細胞は働いてくれるのか。」
ただ、それを待つ時間でした。
毎日の採血が怖くもあり、楽しみでもあった
移植後は、毎日のように採血をしました。
白血球。
赤血球。
血小板。
数字を見ては、
「まだだ。」
「今日も低い。」
「いつ上がってくるんだ。」
そんなことばかり考えていました。
前処置の時は、数値が下がっていくのを見ていました。
でも今度は逆です。
上がってくるのを待つ。
それがこんなにも長く感じるとは思いませんでした。
自分では、何もできない
仕事なら、自分で動けば何かが変わります。
経営なら、考えて判断して、次の手を打つこともできます。
でも、この時は違いました。
自分の身体の中で起きていることに対して、
私自身ができることはほとんどありません。
先生を信じる。
看護師さんを信じる。
そして、
自分の幹細胞を信じる。
それしかありませんでした。
私は何度も心の中で、
「頼むから、働いてくれ。」
そう思っていました。
そして、白血球が上がった
ある日の採血結果。
先生や看護師さんから、
「白血球が上がってきています。」
という話がありました。
その言葉を聞いた時、
本当にうれしかった。
ほんの少し数字が上がっただけでも、
私にとっては大きな意味がありました。
なぜなら、
それは、
自分の造血幹細胞が身体の中で働き始めた証拠
だからです。
「ああ、戻ってきた。」
そう思いました。
生着
移植した造血幹細胞が骨髄に根付き、再び血液を作り始めることを、
「生着」
と呼びます。
それまでの私は、
「本当に自分の幹細胞で大丈夫なのか。」
とずっと疑っていました。
私は血液の病気になった人間です。
その自分から採った幹細胞を戻して、
本当にもう一度血液を作れるのか。
移植を決める前から、ずっと不安でした。
でも、白血球が上がってきた。
その数字を見て、
「自分の細胞が、ちゃんと働いている。」
そう実感しました。
「自分の身体って、すごいな」
私はこの時、
改めて人間の身体のすごさを感じました。
大量の抗がん剤を入れ、
血液を作る力を極端に落とす。
そこから、
自分の造血幹細胞を戻す。
そして少しずつ、
また血液を作り始める。
一度、底まで落ちた身体が、
また自分自身の力で立ち上がろうとしている。
それを数字で見ていると、
「人間の身体って、本当にすごいな。」
と思いました。
一気に元気になるわけではない
もちろん、
白血球が上がったからといって、すぐに元気になるわけではありません。
身体はまだ弱っています。
免疫も完全に戻ったわけではありません。
感染症にも気をつけなければならない。
体力も落ちています。
だから、
「生着した=治療がすべて終わった」
ではありません。
それでも、
私にとっては大きな一歩でした。
「ここまで来た。」
そう感じました。
兄弟に頼らず、自分の細胞で戻ってきた
移植前、
もし自分の造血幹細胞でうまくいかなかったらどうするのか。
その先に、同種移植など別の選択肢があるという話も聞いていました。
弟も妹も、
「必要なら自分のものを使っていい。」
と言ってくれました。
その言葉には、本当に救われました。
でも私は、
できれば兄弟には頼りたくない。
そう思っていました。
だから、
自分の幹細胞が働き始めたと分かった時、
安心しました。
「自分の細胞で、戻ってきた。」
そのことが本当にうれしかった。
でも、ここからが回復の始まり
白血球が戻ってきた。
生着した。
それは大きな節目でした。
でも、
身体が元の状態に戻るまでには、まだ時間がかかります。
体力。
食欲。
免疫。
身体のだるさ。
そして退院してからの生活。
移植が終われば、すぐ元通りになるわけではありません。
むしろ、
ここからが「回復」という新しい闘いの始まりでした。
一度、底まで落ちた身体を、
少しずつ、
少しずつ、
日常へ戻していく。
それが次の課題でした。




