ビタミンC療法

2023.11.30

こんにちは。
がん治療研究者の岸本です。

ビタミンCは基本的には体に悪いことは起こりません。
毒性の出ない最大耐量値はとんでもなく高いので、高濃度のビタミンCでも大丈夫と言われています。
ですが、その目的によって使い方によって有益なのか無益なのかが決まります。

ビタミンC療法はかなり広まっていますが、がん治療には「高濃度」ビタミンC療法と、わざわざ高濃度を謳っている病院があるのに気付いたでしょうか?
その意図とは、がんを殺すなら高濃度でないといけないからです。
では、なぜ高濃度でないといけないのでしょうか?
ここで質問ですが、皆さんはビタミンCの生物学的効果ってご存知ですか?

ビタミンCの生物学的効果とは、抗酸化作用(酸化から守る作用)です。
酸化は細胞を殺したり、がん化の原因ともなります。
少し専門的に言うと、活性酸素種が細胞を殺したり、遺伝子を傷をつけてがん化の原因になったりします。
ビタミンCは活性酸素種を消してくれて、細胞が死なないように守ったり、がん化を防いでくれます。
しかし、ここで矛盾が出てきました。
問題です。
何が矛盾なのでしょうか???

なんと。がん治療と言ってるのに、ビタミンCはがん細胞を殺してくれません。
…不思議です。

で、そこで重要なのが「高濃度」なのです。
実は、ビタミンCは低濃度では抗酸化作用を発揮し正常細胞をがん化から守りますが、高濃度では逆に活性酸素種を発生させ酸化促進に働きます。
がん細胞はもともと活性酸素種がたくさんあり、ちょっとした増加に耐えられず死んでしまいます。
正常細胞はそのようなことは起こりません。
従って、予防を目指すなら低濃度ビタミンC、治療を目的とするなら高濃度ビタミンCとなります。
ここまで説明しておきながらなんですが、高濃度ビタミンC療法ががんに効果があるというヒト臨床試験はありません。
逆に、低濃度のビタミンCががん予防に効くと言うヒトエビデンスもなかったりします。
ほとんど動物(ネズミ)や細胞実験で示されているに過ぎず、がん治療に関してヒトで本当に有益なのか無益なのかは分からないというのが今の現状です。

ですが、裏にはこういった複雑なメカニズムがあり、こういうことを知ってるのと知らないのとでは治療方針を決める際に雲泥の差が出てきますよね。

今回はビタミンCについてのお話でした。



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参考文献

Qi Chen et al., Pharmacologic doses of ascorbate act as a prooxidant and
decrease growth of aggressive tumor xenografts in mice. Proc Natl Acad Sci U
S A. 2008 Aug 12;105(32):11105-9